現場再現(常盆)

大阪市**区へ客が車でやってくる。路上に駐車。
ドアを開けて外へでると、路上に駐車している車から「シケ張り」(見張り。関東では「シキテンを切る」でしたかね?) が出て近づいてくる。

客A(以後「A」とする) 「どや?でけてるか?」

シケ張り 「お越し!今満杯でっけどすぐいけまっせ。」

「ほな、上がっとくわ」

シケ張りに案内されて入り口へ。

中から下足番が鍵を開けて 「お越し!」

靴を脱いで上がろうとすると

下足番 「この札!」 と下足札を渡す。(白いプラスチック製の楕円の札)

「おう!」

中へ入ると、テッタイ(手伝い)、ゴウリキ、采配、が一斉に 「お越し〜!」

手伝いが座布団をだして 「すんまへん!ここでチヨットまっと〜くんなはれ。何かの飲はりまっか?」

「牛乳おくれ!」(不健康な遊びをするのに、何故だか牛乳が人気有る)

手伝い 「へい!」

先に遊んでいた張り客が立つ。

全員が 「悪おました!」

手伝いが五千〜一万円持って行き 「悪おました。帰りです。」と手渡す。

手伝いが、灰皿を片付けハンドクリーナーで掃除。座布団を裏返す。

采配 「悪おました!又きと〜くなはれ!」
Aに向かって 「先の方、どうぞ!」

Aが空いた席に座る。ゴウリキが札を輪ゴムで止めたものを投げて 「調べとくなはれ!」

(サービスの良い所では、ここで「ゲン付けです!」っと五千円くれる)



胴師が壷を振る。

ゴウリキ1 「手早よ〜張っと〜くんなはれや!」
ゴウリキ2 「チョット合わしたってや!」
ゴウリキ3 「こっちは、でけた!」
ゴウリキ4 「こっちは、まだや!チョット待って!」
遅い客に 「向こうはでけてまっせ!チョット手早よ〜合わしたっと〜くなはれ!」

客が張り終わると 「よっしゃ、でけた!」



盆屋全員が 「さ〜いくで!勝負!

胴師が壷を開く。

胴師の横のゴウリキが 「ニィ〜!」(2のこと)

ゴウリキ全員が 「2の有るとこ!」

客がそれぞれ自分の「手残り札」を見る。

口々に(小声で)

「あかん!突き上がりや!」
「一丁見切りや!なんでこの2が出るんや!ケツが4回も続くか?!」
「又、ケツの2かいな!あのボケ、よ〜ケツ出っしよんな〜。」
「このケツは見下ろしで張れるがな!」
「又、ツノや!」
「スイチかましといて良かった!」

ヤカラ者が(大きな声で)
「ワシの一丁見きりばっかり出してくさる!それも、ケツばっかり4回も出しやがって!おかしいん、ちゃうんけ!」


ゴウリキが抜けを引き、配当を付ける。



胴師が壷を振る。の繰り返し。



「悪綱(ワルナ)」が出ると、胴師が 「サイ変えまっせ!」と宣言してサイを変える。その時、目は前のサイの目と同じにして壷に入れる。

そのうちに「おおがい」が当てて店の「悪な」がでると

采配が 「いっぺん洗ろとけ!」と云い、胴師がネのモクをモクの列の上に置き「胴洗い」になる。胴師交代です。

采配がアガリを集める。(各ごうりきが、自分の前の銭の過不足を合わせる)

手伝いが、ブリキのバケツで灰皿の吸殻を集める。

次の胴師が座り、モクをネから123456ケツと並べ直しスタートする。

胴師変りの一番で、大中に入ると配当を倍付けしてくれる所も有る。(但し、いくら張っても1万円まで)

「帰り」の車代は、平均1万円以下の場合は5000円。それ以上の張りなら1万円くれる所も有る。


手配博打


**製作所のA氏に、***B氏より電話が掛かる。

「社長!いつもお世話になっとりますBだす!ご無沙汰してます!今度、来週中にいっぺんコロがそかと思てまんねんけど、社長の都合はどないでっか?」

「あ〜、Bさんでっか、こっちゃこそご無沙汰してますわ〜。本引きだっか? そら〜楽しみだんな〜。来週は何時でも空いてまっせ!しやけど、いっぺんも勝った事無いな〜。いっぺんぐらい勝たして〜な〜。」

「そら〜、社長みたいに前が無いのに50万も張ってたらあきまへんで〜。」

「いや〜、ワシは側の抜けまで全部一気に食うたろ〜思うさかいにな〜。ほんで、今度はシンなんぼや?」

「へ〜!今度はええお客さんがぎょーさん居てまんので、シン30でいこか思てまんねん。どないだっしゃろ?」

「6本腐って180か〜。おもろそ〜やな〜!先に断っとくけど、もし走ってしもたら来月の末でかめへんか?今月はちょっとしんどいねん。」

「そんなもん、社長やったら何時でも結構だ!もしワシが詰まったら、紙切ってくれはったらよろしおまんがな〜。けったいな所へ割りに出したりしまへんさかい安心しと〜くんなはれ!」

「いや、それやったら止めとくわ!手形切ってまでしと〜ない!」

「社長!冗談でんがな!社長のこっちゃ、何時でも結構だ〜!ほな、当日電話入れまっさ!よろしゅう〜に!」(殆ど前もって場所を教えない。部外者に知れてチンコロされる場合が有るので)

客と盆屋のカケヒキで始まる。

当日8時頃、Bの携帯に電話が入る。

「Bは〜ん、近所まで来てんねんけどわからへんわ〜。」

「そこで待ってとくんなはれ。すぐにCを迎えに行かせまっさかい。」

BがテッタイのCに向かって「おい!A社長が**まで来たはるさかい行ってこい!BM乗ったはるさかい、すぐわかる。ワレ、会うたことあるやろ?!」

「へい!覚えてます!細〜て、ちっちゃい人でっしゃろ?」

「ボケ!社長の一番気にしてることゆ〜たらあっけ〜!早よ行ってこい!」

「すんめへん!ほな、行ってきます!」

「そや、ついでに焼酎買うてこい!あの社長、飲ましたら飛び込みよるさかいの〜。」

Aの待つローソンへ着いたCは、Aを見つけて「A社長でんな〜?ワシ、BとこのCゆいまんねん。覚えたはりまへんか?先月、社長が酔いすぎて家まで送らしてもらいましたがな〜。」

「あ〜、なんや知らんけどそんな事あったな〜。よっしゃ、いこか?」

「社長、焼酎買うていきまひょか?」

「ロックで頼むで〜!」

Cの案内で現場に着く。

「社長!ここだす!」

中に上がると、6畳2間の襖を取り外し白いシーツを張られた盆に先客が8人ほど座っている。

「社長、お越し!社長の為に胴師の前を空けてまっせ!」「トンパチでっさかい!」(大1、中8分のサイ本引き)

「Bちゃん、おおきに。ワシは胴師の前が好きやさかいな〜。」(こう云う社長は、第3者が居ると「ちゃん」づけで呼ぶ。B氏もこのような場合は黙認する。他の場面では「ちゃん呼ばわりでっか!」とサンを打っておく)

席に座ると、カバンから100万円の帯び付きを1束出し「今日は、これしかサゲ銭あれへんで。束ったやつと換えてんか。」と、ゴウリキに放る。

ゴウリキがキカイ(張り札)と10万円に束った10束を渡し「調べとくんなはれ!」もう一人のゴウリキに向かって「チョット待ってや!社長が今から張らはるさかい。」

「先、行ってかめへんで!一番見とくから。」

ゴウリキ「よっしゃ、でけた。勝負!」

胴師が壷を開く。

ゴウリキ「ピン〜!シソウのピン。」(1。4.3の1のこと)

張り客達が口々に

「見切りや!」

「突きあがった!」

「こら〜張れんわ〜。」

「おい、カッパや!」(全員抜け)

「エエナや、洗いよるな〜。」

「150ほど生かしよったな〜。」(浮かせた)


胴師が「悪おました!」と胴洗いをする。

ゴウリキが束って、ヒゲを切り、半端を胴師に見せながら「アガッときまっせ!」と手間賃を取る。(ゴウリキの余禄)

B、今終わった胴師に向かって「ザル持ってこっちへ来と〜くなはれ!」(生きを計算してテラを取るために)

A社長に向かって「ほな、A社長!早速、胴いかはりまっか?」

Bの所へ、ザルに生きを入れて行く。

計算すると、155万円の生きであった。

「エエナでしたな〜。この半端の5万円はテッタイとゴウリキの祝儀にやっと〜くなはれ。屋根から2匁乗ってるのとテラ2分(2割)で、うちが60、**はんが90でっさ!**はんの前の胴は腐って、2匁の乗りで36万損しましたわ。これで何とかマ〜つみましたわ。お〜きに!又、張りで頑張っと〜くんなはれ!」

A社長が胴を振る。始めは30万の2本出しである。(ゴウリキ2人の前に30万づつ計60万出す。)

ゴウリキ1「でけた!勝負!」「し〜!」(4)

ワルナである。全員が大中で当たり。張りも多い。

ゴウリキ「チョット待って!計算や!そっちは、なんぼ?」ともう一人の強力に聞く。

ゴウリキ2が自分の前の客達の配当を計算して「こっちは40」

ゴウリキ1「こっちが50。6分付け!」

胴前が60万しか無いのに、総配当が90万なので、平等に6分付け(6割)で配当を付ける。残った半端は「ヒゲ」といってゴウリキの後ろに置いているごみ箱に放りこむ。胴師には「前」以上の負担が掛からない。

ゴウリキ1「3つ前!」と10円玉を3個出して自分の前に15万、ゴウリキ2の前に15万を出す。「前」が合わせて15万を割ったらもう一つ出し30万を足す。60万以上になれば、30万引き、1つ引く。例え100万になっても、1回に30万しか引けない。6本で終わりになり、胴師交代になる。頼めば続けて胴をさせてくれる場合も有る。

客は、適当に帰って良い。

適当な時間で「こんなもんでんな!?」で終わりになる。

その後「タブ」をしたりする場合もある。

手配での集金は、1週間〜10日です。(半金でも付けて、待ったでも何とかなることが多いですけど)

ヤクザがサクサク張れるのは、集金日に「チョット手違いで」で延ばし「段取りが狂った」で延ばせるからです。

一番大きな理由は、勝てば良し、はまれば自分がテラを取れば良いからです。


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